「ひとり旅」でけっこう苦労するのは、ホテル探しだった。
「グレイハウンドバス」から降りると、近くにホテルやモーテルがないか、すぐに探さなければならない。リュックを背負い、重いスーツケースを転がしての移動は、非常に体力を消耗する。市バスを乗り継いで海辺近くの「ミルナーホテル」というところに一週間滞在した。そこにはプールが完備されてあったが、そこから歩いて行ける距離にサンタモニカのヴェニスビーチがあった。
のどかな雰囲気で、上半身裸でジョギングしている人やサイクリングを楽しんでいる人が多い。しばらく海を眺めていると、「この海の向こうに日本があるんだなぁ」と感慨にふける。夏の日差しに照らされた海面は、やけにキラキラしていて、目に滲みた。別に外国人がいるから声をかけるという人もなく、そこに暮らす人それぞれが、自分たちの生活を充実させて生きているふうに見えた。サンタモニカの夕焼けはとてもきれいだった。泣けてきた。
ロサンゼルスでは、ユニバーサルスタジオやディズニーランドにも行ってみたが、一人で行っても全く面白くなく、長い列に並ぶ自分が寂しくなってくる。前と後ろから聞こえてくる会話がとても楽しげで、自分はこの場所では浮いている存在だと感じた。自然とそこで写真を撮る枚数は少なかった。旅の先々で日記を書いていたが、このときの字数はやはり非常に少ない。
ロサンゼルスから小型飛行機でラスベガスへ行った。上空から見えたその街は、「何も無い殺伐とした砂漠の中に浮かび立つ眠らない街不夜城」だった。昼も夜も観光客の歩く姿が絶えない歓楽街。人は、「一攫千金の夢を抱いてギャンブルに興じる」と言うが、そんな大それたことを考えいる人はそれほど多くなく、「ひとときの快楽をここで過ごせれば」という気持ちで来ているように思えた。
街ゆく車は、確かに高級車が多い。来ている人々の服も、「それ、どこで買ったの?」と思わず聞きたくなるような代物だった。こっちはヨレヨレのジーパンにTシャツ一枚の「ひとり旅」だった。
宿泊先は、「ホテルネバダ&カジノ」といいう、やけに豪華な造りの建物だったが、三泊でなんと五十三ドルだった。
「なんでこんなに安いんだろう?」
と思い、ガイドブックで調べると、ホテルの滞在費を安くして、その分を遊びのほうへ回してほしいという考え方があるらしい。バックパッカーや「ひとり旅」をしている者にとっては、ありがたいことだ。当然、目的が異なる旅行者が、ギャンブルやエンターテイメントショーに酔いしれるはずもない。