べとべとべー
カチャカチャカチャ。カチャカチャカチャ。
タイプ音とともに、字幕が流れた。
「我々人類は、いったい何者なのか! 鳥族なのか! はたまた魚族なのか! 今夜、その歴史が明らかになる!!」
それが消えゆくと、『水曜スペシャル』という迫力あるタイトル文字が浮き上がった。
ドドドドーン。 ダダダダーン。
低く響きわたる楽器の音と勇ましい音楽が流れ始めた。『水曜スペシャル』で毎回流れる音楽だ。スタジオからの生放送。女性アナウンサーの早口で弾んだ声。
「さぁ、いよいよ始まりました。今夜の『水曜スペシャル』楽しみですね! 世紀の大発見! 鳥族、魚族は本当にいたのか? 今夜、人類の歴史は大きく塗り替えられるのでしょうか! さぁ、これから『水曜スペシャル』探検隊の山本隊長が、現地で検証を行っていくということで、向こうからの配信を待っているところです。さっきから私も期待と緊張で胸が高鳴っております」
わくわくとした表情が好奇心を掻きたてる。ナレーションとともに映像が流れた。
土に埋もれた人骨のような骨。これまでの人類の進化論を大きく揺るがすきっかけとなったのは、インドとパキスタンの国境近くで発見された骨であった。
見つかったその人型の骨の手の骨格は、今まで見つかった猿人や原人のそれとはまったく違ったものだという。人類の進化の過程で、鳥人、魚人が存在し、もしかすると、今も我々人類の中にその子孫がいるのかもしれないと言うのだ。
ナレーションが終わると、現地での検証の場面がくり広げられた。『水曜スペシャル』の名物である山本隊長のパフォーマンスで、さらに場面は盛り上がる。
としおは、テレビにくぎ付けになった。お母さん、お父さんも一緒に見ている。
「本当にこんなことってあると思う?」
「そうだな。すぐには信じがたいけど、学者が調べたんだろう」
テレビはだんだん、核心に迫っていく。リビングはシーンとして、コメンテーターの話し声が賑やかに聞こえた。
「人類の進化の仕方が二種類あったなんて! 鳥族と魚族に分かれるんだって! 驚くよね」
お母さんが一番興奮気味だ。
としおは、自分はどちらだろうと思った。
夜の九時に始まった番組は、終始盛り上がり、十一時近くまで続いた。
「としお、もう寝なさい。明日おきれないよ」
「えー。いいよなぁ、大人は。いつまでも見れて!」
そう言いながらも、睡魔に勝てそうにないとしおは、番組の途中で布団に入った。