翌日のこと、

「昨日の『水曜スペシャル』面白かったよなぁ」

坊主頭の翔太がそう言うと、肩にランドセルをひっかけたまさとが目を輝かせた。まさとは細身でまあまあ背も高い。いつもランドセルは背負わず肩にかけた。

「うん。おれ、絶対自分のこと、鳥族だと思うんだ」

「まさとならきっとそうかもな。俺は魚族だな」

「翔太は水泳得意だもんな」

年中半袖で、黒く日焼けした翔太は、運動が得意だ。

「じゃあ、私は何族と思う? だけど、進化の過程が違うなんて本当だと思う? 同じ人間でよ」

六年生の真理子は背も高く、話し方も大人っぽい。今日は集団下校の日、としおは、いつも五人の仲間と一緒に帰る。みんなは、昨夜のテレビ番組の話題でわいわいと盛り上がっている。としおはみんなから少し離れたうしろで、話を聞くともなく聞いていた。

道ばたでヒメジョオンの花が笑うように揺れている。

「おい、としお」

急に声をかけられて、としおの心臓は一瞬飛び出しそうになった。

「おまえ、さっきから黙ってんなぁ」

さぐるような目でそう言ったのは、幼なじみのまさと。としおは軽く息をのんだ。

「あら、としお君。その右手の包帯どうしたの? それに右目の上もはれてる」

真理子が、としおの顔をのぞき込むように言った。

としおの体は緊張のあまり固まりそうだ。