「そうすると、電気伝導度が高いってことは、化学肥料で川が汚されているってことが言えますね」出丸が目を輝かせて言った。
「可能性は高いってことだが、根釧原野では川を汚す原因は限られている。化学肥料と家畜糞尿、酪農排水ぐらいしか汚染源は見当たらないのは確かだ」
久保田は慎重に言葉を選んで話を進めた。
「そして、家畜糞尿や酪農排水にも、イオンが大量に含まれている」
「そうすると、川の周りに酪農家が多くて牛が多いほど、川は汚れるということが、予想される」
出丸は気になったことを口に出す。
「それを確かめた人はいるんですか?」
「いや、いない」
久保田はそう言うと、一息ついて意外なことを言った。
「そこで提案なんだが」
「君たちニシベツ実業高校水産科で、河川の電気伝導度を測ってみないか」
久保田の提案は唐突だったが、大河はすぐさま実行する価値があると判断していた。
「やってみましょう」と大河ははっきりと答える。出丸も川原もうなずく。
「ニシベツ実業高校にポータブルの電気伝導度計が何台かあるはずだ」
「水産科の富阪先生は水質に詳しい。富阪先生に話を通すといい」
「それから、河川の調査地点を選ぶには、役場の館内農林水産課長に相談するといい。漁業だけではなく酪農についてもよく理解があるから、いいアイデアを教えてくれるはずだ」
久保田が言い終わると、大河、出丸、川原の三人は、一礼をしてニジベツふ化場をあとにした。