【前回の記事を読む】「買ってもらうのに言いにくいけど…」武骨な先代から変わってしまった新車とは
車社会の行く末はどこ
世紀の発表イベント【ケンメリスカイライン】
当時、日産はデュアルのエキパイのマフラーをローレルSGXなどいろいろなクルマに取り付けていた。対してトヨタはあまりデュアルのエキパイにはこだわりがなかったようで採用しなかった。現在は両脇2本ずつの合計4本出しとか、中央部分に3本出しとか、競って高性能を誇示するためにおどろおどろしいエキパイも増えているが、当時は日産のデュアルが一番カッコ良かったと思う。
規制前のL20のエンジン音、エキゾーストノートを聞きながらスカイラインに4年間乗れたのはとても幸せな経験だった。2000ccで110馬力!のエンジンなので決して速い車ではなかったが。
“あの熱気に包まれたスカイラインの発表会でみた車に本当に乗れた”
いうまでもなく、あのような新車発表会はその後二度とない。穴が開くほど、ボロボロになるまで私が毎晩見続けたカタログもその後1冊もない。
以前、クルマ好きの久米宏さんがラジオで、晴海でモーターショーをやっていたころ、各自動車メーカーのブースにいって片っ端からカタログをもらい、ひと月はそれを見て楽しめたということを言われていた。
現在の新しい車のカタログを今でも私はよくディーラーでもらってくるのだが、一晩見たら次の日には新聞と一緒に資源ごみの袋に入れてしまう。先進技術、安全対策、太いタイヤに素晴らしい本革シート。
しかし、50年来の車好きのオヤジの胸に訴えてくるものがない。非の打ち所のない完璧な人間には人間味がないのと同じで、今の車には“クルマ味”を感じることがない。高性能は良くわかるのだけど、冷たく隙がないからだろうか。
ケンメリスカイラインの7連メーターを運転席で見た時の感動を二度と経験することはないのであろう。