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人を引き込む魅惑の力、極楽異能力者、綾瀬蘭子(あやせらんこ)三一歳、料理研究家

綾瀬は、それなりに裕福な家庭に育ったが、子供の時から特別かわいいというわけでもなく、勉強ができるというわけでもない、ごく普通の女の子であり、決して目立った存在ではなかった。中学、高校、そして大学と、私立の女子校に通った。その中でも特に目立ったことは一度もなかった。

ただ、どんな立派なお嬢様学校であっても、女子同士では、どんどん言葉使いも、仕草も雑になってくる。男性を意識しないということが、より人間らしくしているのかもしれない。そんな中で、綾瀬は逆に女性らしさを追求することが自分のアイデンティティーとなることを発見していた。

そんな時に、テレビで、同じように女性らしさを追求している女性を見つけた。その女性も決してとびきりの美人というわけでもないのに、その仕草が男性を引き付ける魅力にあふれていたことにはある種感動すら覚えたほどである。そのテレビの中の女性は、有名企業で女性社員に接客の講義もしていたとのことであった。

私もこれを目指そう、と決意した瞬間であった。

それから、女性らしさを追求するために、お茶やお花まで習得し、最終的に行きついたのが料理である。料理の世界は味や見栄え、創造性から簡便性まで、あらゆる要素が存在するが、女性らしい優雅さがこれに加われば最強と考えたのである。

綾瀬は妄想した。綾瀬はテレビで料理教室を行っており、それがゴールデンタイムに放映されている。その料理の素晴らしさはもちろん、綾瀬の言葉や物腰が魅力的と、その人気はものすごく、視聴率も最高ランクを獲得するほどである。今や、ゲストにも、人気の俳優を呼び、その熱い視線を浴びている。

綾瀬が私的に主催する料理教室に通う男性たちは、それを見て、自分もこの教室に通っている、この先生と話したこともある、と自慢しているのである。綾瀬はもうスターであった。

しかし、現実には、未だテレビに呼ばれることはない。やはり、料理の世界は競う相手があまりに多く競争が激しくて予想していたようなこともなく、はなばなしい人生とまではいかないのである。その一方で、身近な男性からの熱い申し出を受け、自分の人生を、そして自分の能力を第三者の目で見てもらうことにより再確認したいと思い、このクラブに入会を申し込んだのである。

結局、これを能力といっていいかどうかは未確定のまま、男性会員だけでなく、綾瀬以外で唯一の女性参加者である六島も含め、全員の賛成により、入会が決まった。