第一章  ギャッパーたち

(三)武田賢治

そして武田はそのどちらの試験にも合格したものの、国家公務員試験の方は合格の順位が思ったほどではなかった。国家公務員試験はその合格の順位で入れる省庁が決まる可能性が強いため、合格したもののその順位がはかばかしくない武田としては、上位人気の省庁に入ることができないときにプライドが傷つくかもしれないと思い、結局、国家公務員になることをあきらめた。

ここでも、武田には、特別にどの省庁に行きたいといった志も思い入れもなく、ただ難易度で選ぼうとしていたわけである。偏差値で育ったエリート意識の優等生らしい対応ではあった。

そうして武田は司法試験の合格を選択したのである。

司法試験に合格すると、司法修習生となり司法研修所で研修を受けて裁判官、検察官または弁護士となるが、その中でも裁判官になれるのは、年齢が若くその上で成績もよい者なのである。さらに採用される人数も少ないという狭き門であり、司法試験合格者の中でもより難易度の高いルートといえた。

そもそも検察官は犯罪者ばかり相手にするのは気が滅入る予感がしたし、弁護士に至っては、依頼者に頭を下げるのが嫌だった。そこで、よりエリート性の強い方向を選ぶ武田にとっては、当然に裁判官を選択することになる。そして武田はこの条件をクリアして見事、裁判官となった。