二人が店の中で話をしているその時、白いベンツのオープンカーが、店の駐車スペースに入ってきて、黄色いウインカーを点滅させて止まる。店の外のデッキでその車をぼんやり見ていた千佳が、圭の肩を叩く。
「ねえねえ、あの白いオープンカーを運転している男、さっきの刺青男じゃない?」
するとその時、女が店のドアを開けて黒いビキニ姿のまま外に出てくる。女は自分のウエットスーツを持ち、白いベンツのオープンカーに乗り込む。その車には女のサーフボードが積まれていて、上半身裸で金のネックレスをつけ刺青をした男と、江の島方面に走り去っていった。ヨッサンが椅子に座っている二人に言う。
「何か冷たく陰のある女だけど、すごく色っぽい。女優やモデルのような見た目だが、とても知的な感じもする。なんだか不思議な女だな。俺がもう少し若かったらきっと口説いていただろうな」
ヨッサンの話を聞いて、千佳が突然椅子から立ち上がる。腰に手をあて、赤いビキニ姿で長い脚を見せつけるように、胸を突き出してモデルのようなポーズを取る。
「ヨッサン、あの女と私、どちらがセクシーかしら?」
ヨッサンが笑いながらこたえる。
「そうだな、千佳ちゃんもあと四、五年経ったら、あの女といい勝負ができるかもしれないな」
ポーズを取る千佳を見て、圭が飲み終わった空のペットボトルを軽く投げつける。
「千佳、おむつをした子供が歩いているみたいじゃないか。俺はもう帰るぞ」
千佳は圭の顔を見て怒り、ふくれ顔になる。圭はそんな千佳を無視して、ヨッサンに
「俺はそろそろ帰るよ」
と声をかけ、デッキをさっさと下りていき、自分のマンションに向かって歩いて帰っていった。