第一章 青蛙
カラス
なあ カラス 私はお前を嫌いじゃないよ
そのてかてかと光る真っ黒な羽が喪を連想させるし
ギャーギャー騒ぐ鳴き声は不吉を誘うと
世の人たちは嫌うけど、私はひょっとして好きかも
お前がたった一羽で落ち穂をつついている姿なんて
まるでお爺の背中のようで哀愁が漂っている
何よりお前の鳴き声には魅力がある
つがいで夕方 かあかあと巣に戻る姿は
童謡のまんまじゃないか
きっとお山で七つの子カラスが
待っているんだろうな
お前のぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる声だって
仲間の異変を心配している声なんだってね
中でも一番好きな鳴き声は
お前たちが電線やフェンスに止まって
アルトで、お腹の音のないガスが出たような
気のない声で「かあ〜」と語尾を下げて
鳴いたときは「ラッキー!」とさえ思う
ほかにもお前を好きな理由がある
でもこれを語り出したら
とっぷりと日が落ちてしまう
母からの連想ゲームのように語らないと
とにかく私はお前を結構気に入っている