【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第一章 青蛙

道端

道端のたんぽぽ

ピーピーとならしてみたいけど

君があんまり黄色くレモン色に

大地を彩っているから

取るのをやめたよ

道端のいぬふぐり

ふぐりなんて変な名前

手に取って眺めて見たいけど

君の薄青さがあんまり清らかで

取るのをやめたよ

道端のなずな

シャランシャランとならしてみたいけど

そんな遊びももう笑われそうで

取るのをやめたよ

夏はえのころ草がもしゃもしゃ

秋は曼珠沙華が金襴(きんらん)緞子(どんす)のようで

可憐な野地菊に赤とんぼが揺れている

追憶の中でその色や形 匂いや手触り

春も夏も秋も折り重なりながら

道端で見てきたとりとめもない夢

それらはまるでけなげで

純真な夢のようで

幼い特別な日々を思い出させる

あの頃見ていた夢は

どこかに消えてしまったけれど

一人暮らしのだんまりの口から

かわいい歌がほころんできて

寂しさがどこかに飛んでいく

声を出し歌いながら

一人で道端散歩を楽しんでいる