【前回の記事を読む】専門家が語る「遠視の人は積極的に適切なメガネを」のワケ
第二章 眼因性疲労を知る
1 眼因性疲労(Oculomotor syndromes)とは何か
お客さまの誤解(眼鏡店が眼精疲労用メガネを勧めることの困難)
ていない人は、屈折測定値そのものがお客さまが普段使っている眼の性質を表しているとも言えます。つまり、近視なのか遠視なのか、乱視や斜位はどの程度なのか、年齢相応の調節力があるのかを調べることで、個々の眼がどのような眼球運動でモノを見ているのかを推測することができます。
すでにメガネを常用しているお客さまは、来店時に装用していたメガネのレンズ度を調べておき、当日の検査によって得られた屈折度と来店時装用のメガネ度とを対比して、装用中のメガネがお客さまの眼にどのように影響(作用)していたのかを知ることができます。
この方法をCCA分析と呼び、計算で割り出すことができます。これまでどのような眼で過ごしてきたのかを知る上で重要な資料になります。
この計算式は日本眼鏡学会誌の「眼鏡学ジャーナル」に当時の発表資料として掲載してありますが、ワールドオプティカルカレッジのホームページ上に「残余度数の自動計算」や「プリズムの合成」の計算ソフトがありますので大変便利でお世話になっています。
そこで遠視や遠視性乱視があることが判明したお客さまと、CCA分析でCC遠視やCC遠視性乱視状態で過ごしてきたお客さまに、日頃肩が凝ったり、首筋が痛んだり、頭痛、腰痛などの症状がありませんかと尋ねますと、双方のお客さまの7、8割から、いずれかの症状が「ある」という答えが返ってきます。
「ある」と答えた人に、胃腸の具合はいかがですか、身体が疲れやすくありませんか、パソコンやスマートフォンをやっていて眼の疲れはありませんか、眩しさはありませんかなどと尋ねると、ほぼ半数の人からいずれかの症状があるとの返答があります。
「それらの症状は眼からきているのかもしれません」と話しても、自らの肩こりや頭痛が眼からきていることを疑ったことのある人はほとんどいません。これらの眼精疲労独特の症状を持ったお客さまに対して、どのようにしたらメガネを掛けるキッカケを作ることができるでしょうか?
視力の悪いことが疲れの原因であるならば、「視力を良くすれば身体も楽になりますよ」とお話しすることができるし、説明も比較的容易なのですが、いかんせん遠視の視力はすこぶる良好ときているのですから視力で説得することができません。
お客さまに、眼とメガネと疲労の関係を理屈で説得しようとしてもたやすく理解してもらうことが難しいと思われますから、論より証拠というわけで体験してもらうことにします。検査で得られたテスト用メガネをしばらく掛けてもらいます。