【前回の記事を読む】ハッキリ見えるだけではダメ…「疲れのとれるメガネ」を選ぶ方法
第二章 眼因性疲労を知る
2 Oculomotorについて
Oculomotorのつかさどる機能
(1)眼球運動では、毛様体筋は水晶体の厚みをコントロールして調節作用を担います。瞳孔括約筋は虹彩に働いて瞳孔を収縮させる絞りの役割を果たします。これら近くのモノにピント(焦点)を合わせる働きをする筋肉を内眼筋と呼びます。
さらに眼球の外部に付着して眼球を回旋させて両眼の視線を一点に集中させる六本の筋肉を外眼筋と呼びます。両眼視のために内外の眼筋を駆動する運動を眼球(筋)運動といいます。生理学では筋肉や神経の運動を起こす意味でmotorを用いますから、oculomotorは水晶体の調節作用や輻輳などの動眼運動という意味で用います。
(2)眼球運動の直接の司令塔は中脳の第Ⅲ脳神経、すなわち動眼神経(oculomotor nerve)ですが、眼球運動と脳神経の関係をもう少し細かく見ていきますと、調節や縮瞳をつかさどる中枢は動眼神経副核(エディンガー・ウェストファル核)にあり、眼球の運動に関しては動眼神経の他に外転神経(第Ⅵ脳神経)、滑車神経(第Ⅳ脳神経)などが大きく関わっています。
(3)眼球運動の真の意義とは
眼球の“向きや寄せ”と呼ばれる回旋運動と、縮瞳および調節は、外界の情報を両眼の網膜上の定められた位置に正しく結像せしめるための働きです。そうして得られた網膜上の情報が視神経などの視覚伝導路を介して大脳皮質の視覚中枢に送られ、そこで両眼の網膜像が一つに融像されると、遠近感や奥行き知覚、立体視などの高度な三次元の視覚を得る事ができるようになります。このことを両眼視といいます。
正しい視覚情報が大脳で得られるためには、まず両眼の網膜上において正しい二次元の網膜像(情報)を得ていなければなりません。これは大変緻密な作業です。これを担う眼球運動は一次視覚情報処理ともいうべき大変重要なもので、情報の入り口である眼球において全てが行われます。
もしも、眼球運動にわずかな支障でも起きるならば一瞬にして混乱を来して両眼視ができなくなります。大脳で正しい視知覚が得られる様に、脳幹の神経を総動員して眼に課せられた両眼視の使命を達成するために働くのが眼球運動です。