今日は久しぶりに軟式テニス部の聡と帰りが一緒になった。聡は小学校ではまった織田信長と明智光秀の「本能寺の変」を今度は中学の歴史の授業から影響を受けていた。
「1582年6月2日早朝、京都本能寺に滞在していた織田信長を、家臣明智光秀が謀反を起こして襲撃した」
カバンから透明ファイルを取り出し、雑誌の切り抜きを見て、純太に読んで聞かせた。
それから、「本能寺の変がテレビドラマになるんだ」と言った。「絶対見る」とも言った。純太は動画の特訓の時のように「本能寺の変」にあまり興味が湧かなかった。
「あのさ」と聡は急に話題を変えた。もう直ぐ三者面談が始まる。三者面談とは教師と生徒とその保護者との面談である。主に進路について話し合いが行われる。高校進学の話になると親と喧嘩になるとぼやく聡は
「純太はどこの高校に決めたんだ」と聞いた。
「そうだな、近場だったらどこでも良いんだ」
純太は親にそう言って叱られた記憶が蘇った。
「公立だったらN高かな」
「じゃ、俺も」
気楽に答えた聡は
「うちの親はさ、純太の事、信頼しているから、一緒のところを受験するって言ったら安心すると思うよ」
「やめてくれよ。競争相手が増えるじゃないか」
「大丈夫だよ。偏差値、お前の方が上なんだから」
「そういう問題かよ」
純太が抗議の為に聡の腹に軽くパンチをかましたら、それをヒョイとかわして、聡は引きずるように持っていたラケットを肩にかけ直した。
二人は笑い声をあげた。