ルナ姉はよく俺の事を心配してくれる。
今、俺は、父親が一週間に一回帰って来るや否やの状況を除けば、実家で一人暮らしをしている状態だ。父親の仕事内容は分からないが家にはあまり戻らない。
母親は既に他界しており、唯一、姉であるルナ姉が俺を気遣ってくれる。
彼女の言うことはいつもお節介に似ており「夕飯は何を食ったのか?」「明日はゴミ出しだ」「ちゃんと寝ているのか」「明日は天気がいいから布団を干せ」等が常トークだ。
彼女は元々体が病弱な為に、ある程度の頻度で意識を失い、今も実家ではなくここに入院している。たったそれだけの理由で常人とは違う集団の中にいる。
許されるのなら俺もずっとここにいたい。ここでルナ姉と過ごしたい。
でもそれは誰も許してくれないことで、何よりルナ姉が望まない。
……ルナ姉を困らせたくない。
「……そろそろ、家に帰らないと」
あれから数十分後、夕日が沈んだ頃に彼女がそう口を開いた。
「え、いいよ、まだいる。どうせ家に帰っても寝るだけだし、それならまだ時間あるだろ?」
「駄目。暗くなったら危ないよ。レッカ君は軽いから誘拐とかでひょいっと持っていかれちゃうよ」
「訳分かんねーこと言ってないで、もっと何かしゃべってよーぜ?」
「いーや。ほら、入り口まで送ってあげるから、行こ」
「……ったく、明日もまた来るからな」
「うん、待ってる」
そうして並んで病院の入り口まで歩いた後、俺はここを後にした。
入り口で俺に手を振っているルナ姉。
俺は名残惜しさを覚えながら何度も振り向き手を振り返した。