『非現実の幕開け』
憑依生命体対策本部、通称SPH。
総勢200名以上で作られる、我らが住む久禮市が誇る大組織。
彼らの活動は憑依生命体と呼ばれる未知の人型の狂戦士を処理することで、俺たち一般市民を助けることを使命とし、その志は決して低くはない。ただ、俺は未だ憑依生命体をこの目で見たこともSPHの攻防も見たことがないので、これ以上の詳しいことは分からない。
「皆、分かった?」
「はーい」
「『はーい』 じゃなくて『はい!』」
「はい!」
どうでもいい。
それから数分の休み時間の後、一限目の理科の授業が始まる。苦手分野だ。
授業の始まり、まず空欄の空いた長ったらしい文が載ったA4プリントが一人に一枚ずつ配られる。次に先生が説明しながら重要項目を板書するので、それを映す事でプリントの空欄を埋める。それがこの授業の大まかな流れだ。
ノートいらずという点を見れば比較的楽だが、俺に言わせれば訳も分からず、ぼーっとしながら板書を写しているので、せっかく手を動かしていても頭にはあまり知識が入り込まないという有り様だ。
その後も淡々と授業が続き、遂に待ちに待った昼休みとなる。
昼休みは友達とグラウンドに遊びに行き、日によってサッカーやドッジボール等をしたりするが、今日はバスケットボールをした。俺はバスケに関して特に上手い方でもなく、利き手でドリブルをする時もボールを見ながらでないと出来ないくらい下手だった。
しかし、俺はひたすらボールを前に出そうと、偶然にもドリブルでボールを運ぶ役割を果たした。その最中ロングパスをしようと大きくボールを振り上げるシーンがあったが、勢い余って掌から落としてしまう。
幾分大振りだったためにチーム内どころか敵チームにも羞恥を見せつけ、誤魔化すように派手に苦笑いした。