「えー、……どうって、普通だよ。なんの変哲もない普通の日常って感じだよ」

そう言いながら、傍らに立てかけてあった来客用の椅子に勝手に腰かける。

「ふーん、今日の授業は?」

「何で、んなこと話さなきゃいけねーんだよ……」

「嫌なの? ……じゃあ、他。今日学校の昼休み何やった?」

「えー? あーっと、バス……あー、これは何でもない」

結局、学校の事かと思いながら口を動かすが、ピンポイントで羞恥に苛まれた記憶が出てくる。昼休みのバスケの話なんて何の面白みもない、「俺の空振りパス」の話なんてからかわれるだけだ。

「え、何それ。すごい気になるんだけど。昼休みに観光バスが学校に突っ込んできたとか?」

「……だったら、すげー面白いんだけどな」

「じゃあ、何? またレッカ君のドジッた話?」

「……ご名答」

「ふふっ。 レッカ君て一日に一回くらいのペースでドジするよね。恥ずかしくないの?」

「もー、それマジで心に刺さるからやめてくれ」

……そう。

俺はかなりのドジ体質で不器用で、すべからく恥に満ちた人生を送っていた。

登下校中は何もない所で転びそうになるわ、寝ぼけて変な寝言を発言するわ、授業中に(よだれ)を出して寝るわ、テスト中には腹がグーグー鳴るわ、外でドッジボールをすれば股間に直撃するわ、移動教室で違う教科書を持っていくわ、まだまだ数えきれない恥じらいを毎日毎日……。

本当にこんな自分が嫌になる。

出来るのならば、今すぐにでも自分以外の誰かに成り代わりたい。それか、透明人間になりたい。もしくは、もういっそのこと人間辞めたい……。

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