そして放課後にまた一限だけ授業があり、その後に行われる「帰りの会」が終わると、すぐに俺は部活にも行かずリュックを背負い、真っ先に学校を出た。

目的地は決まっている。俺にとってそこ(・・)へ行く事は学生が勉学をする事と等しいくらい、大切だ。

学校から数十分。

市内で最大規模を誇る市民病院に到着する。

敷地内は四千平方メートル程で中央に大きな病棟があり、その隣には二階建ての四輪車と二輪車の駐車場が設けてある。病棟内は病院であることを証拠に、地元に住む軽症患者が毎日大勢診断に訪れるので普段から人の密度は高い。

また、この病院では全体の十分の一が院内学級になっていることが特徴的だった。

俺は病院に着くと躊躇いなく院内に入り込み、迷うことなくエレベーターに乗り込む。そして「7」と「閉」のボタンをテンポよく押す。

七階の院内学級がある棟に入り、その中のとある個室に赴いた。

そこに俺の用がある人物がいる。「ルナ(ねえ)ー、入るよ?」

「コンコン」と、彼女の名前を言いながらノックし、返事も待たずにガラガラとドアを開ける。室内はいたって一般的なもので、彼女はそこにいた。

中央に置かれたベッドに高校用の制服を着込み腰かける彼女は、こちらに背を向け窓の奥に広がる景色を見ていたが、俺の声か個室の扉が開く音に反応して、顔をこちらに向け言葉を返す。

「……レッカ君。来たんだ」

彼女の名前はせせらぎルナ16歳。血は繋がってないが家族であり、俺の唯一の姉。生まれつき体が病弱な為、今は院内学級に所属している。

「おう、めっちゃ来るぜー。もう、いつでも来るわ」

ふざけるようにそうラフに応え、彼女に歩み寄り背負っていたリュックをベッドの隅に無造作に置く。

「それじゃあ、まるで私のストーカーみたいだよ」

「ええ⁉ ちげーよ!」

「冗談。ねえ、そんなことより今日の学校どうだった?」

学校の生活に興味があるらしく、来て早々声のトーンを一つ上げる。

俺からすると特に楽しい事も無く、必死に耐え抜いた一日の学業行事を振り返るだけなんだが……。