~希望の光~
2人の距離はどんどん近づいていた。
まひるは、最近凛とヒカリと一緒に居られる時間を大切にしている。凛もその事には気がついてはいたが、何も言わずにいた。それが、まひるにとって、良いことだと思っていた。
しかし、まひるは、少しの不安を感じていた。自分が今まで歩んできた道に後悔はないが、唯一有るとするなら、ヒカリの父親の事だった。
ヒカリの父親が、まひるから去っていったのは、学生の時だった。まひるは、1人で産んで育てる決心をし、ヒカリを育てながら大学に通い、時にはヒカリに寂しい思いをさせてしまった。まひるは毎日、何件もの手術を行い、午前中は診察にも出て病院と家との往復のみだった。
ある日、医務局に新しい医療メーカーの人が訪ねてきた。
ふと見ると、別れたヒカリの父親だった。まひるは、気が付かない振りをしていたが、メーカーの担当者である、元恋人の真一が医局員を接待に誘っていた。
インターンの佐藤が、人数の確認をしていた。まひるはヒカリが居るので、出来る限り欠席していたが、新任の佐藤は、まひるの事情を知らないので、「まひる先生は、行けますか?」と尋ねた。
その時まひるは真一と目が合ってしまった。真一は気まずい感じで佇んでいたが、同僚の井伊先生が、「まひる先生は、シングルマザーだから、無理なの覚えとけよ~」と、佐藤を叱咤した。
その時真一は何かを聞きたそうにしていたが、その様な雰囲気ではなかった。