2+1は……
そこには、雲ひとつない青空が広がっていた。
「ここが、新しいお家だよ、ヒカリ」
まひるは、1人娘のヒカリを呼び寄せて言った。引っ越し屋が、荷物を運び入れていた。
「ソファーはそこの壁に付けて置いてください」
子供の物は右の部屋、箪笥や化粧台は左の部屋へ、とまひるは忙しく指示していた。
「平屋でも3LDK、立派な物だと思わない?」
ヒカリの部屋は、東向きの木漏れ日、囁きが聞こえてきそうな部屋で、気に入ってくれている様子。
引っ越しがひと段落して、2人は蕎麦を食べていた。
ヒカリがまひるに
「どうして此処に決めたの?」
まひるは、蕎麦を頬張りながら応えた。
「黄緑の屋根かな~」
「それだけで決めたの? 子供の為の環境が良いとかで決めるのにそれだけで! まひるらしいわ!」
まひるはすかさず
「親を呼び捨てするんじゃないの! お祝いに一杯付き合う?」
「小3の娘に言うことば?」
「今日だけ特別だからね~」
ヒカリは、冷蔵庫からビールとオレンジジュースを持ってきてテーブルに置き、
「昼間から飲むのは今日だけだからね!」
とクギを刺した。
まひるは、一体誰に似たのやら? と思っていると、
「パパよ!」
と、ヒカリが答えた。
まひるはそんな時、少しドキッとするが顔には出さない様に努めていた。
「まひるの顔に書いてるからわかるんだから!」
まひるは、笑って誤魔化した。そうして、まひると、ヒカリの2人暮らしが始まった。