~出逢い~
慌ただしい朝だ。
「まひる、早くしないと仕事遅れるよ!」
ヒカリの声が耳に刺さる。
「今、化粧終わるから先に出て!」
「鍵をかけて出てよ!」
と、ヒカリが叫んでいる声が聞こえた。
「どっちが親だか分からないわ!」
慌ただしく、まひるは仕事に出かけた。
昼食を一人で取っているまひるに、同僚の長谷部先生が自分の食事を持ってテーブルに来た。
「あれから、10年経つんだなぁ。やっと吹っ切れて、引っ越ししてどうだい?」
「ヒカリも慣れて、割りかし新鮮な感じかな?」
「君達もこれからなんだから頑張れよ!」
何かあったら相談に乗るからと、長谷部が食事をしながら話し始めた。
「ヒカリちゃんには、父親のいない分頑張らないとな」
「ヒカリは産まれた時から父親が居ないから思い出がない分寂しさも少ないみたい」
まひるは何気なく答えた。
そこに、佐川先生が仲間に入ってきた。
「僕も仲間に入れて下さいよ~。今度、合コンしません? まひる先生セッティングして下さいよ~ 先生だって独身なんだから」
と話し始めた。まひるは、
「独身でも、子持ちの独身ですからね~。他に頼む人いるでしょうに~」
「意外と、この仕事夜勤あるし、呼び出しくるし、出逢いがないんです!」
「じゃ~看護師長にでも頼んどいてあげるわね」
と、言いながら席を立った。
佐川が、困った顔で見ているのが楽しかった。何故なら、看護師長は、定年間近の年だったからだ。