通り道は秋だというのに、まだクチナシの匂いがした。
このところ雄二から連絡がない。忙しいのである。お父さんは病院から帰ってきているが、リハビリに通わないといけないので雄二が運転して同行している。男のほうが力もあるので、毎回仕事をやりくりしては出かけているようだ。お父さんは大幅に回復している模様である。
秋になり私のレストランも秋の素材を追いかけている。栗が詰まった鳥の丸焼きや、梨のトルテなどは好評で、とっても忙しいこの秋に、フランス語ができる鳩山さんは、オーナーの稲穂さんに連れられてパリへ行くことになった。何と稲穂さんの持ち馬が凱旋門賞を狙うから通訳だというのだ。随行して14日もいなくなる。
私はその間の責任者になった。卵はもちろんまだ割れない。
まだ一ヶ月後なのに、鳩山さんは色々と忙しく準備している。彼としてはパリの美味しい食べどころを訪問し、ワインのリストを充実したいらしい。馬と一緒の特別機で行くらしい。1頭はおととしの皐月賞で1着になり、ダービーで3着のミノリーヌ。雌なのだ。お相手の同行馬も雌でトゥーランという。
通訳は他にもいるのだが、稲穂さんは鳩山さんを連れて「パリ食べ歩き」もしたいのだそう。