10 飄々

久々に同じ高校で同じ大学に進学したヒロキと夕食をすることになった。ヒロキとはキャンパスは違うが、昨日ラインが入ったのである。予定が空いていればということだったのだが、スグルとしては、作曲に悩んでいたので、乗り気ではなかった。しかし、友の顔を見れば何か変わるかもしれないし、話せる機会が尊く感じた為、会うことにした。

大学というよりかは高校の駅から近い、ファミレスに入った。ヒロキは何かを話したくて、仕方がない様子だった。

「どう、大学は?」

スグルは非常に、従順な態度で言った。

「うん。面白いよ」

「それは良かった。これはできたの?これは?」

ヒロキが小指を1本立てて、ニヤニヤしている。スグルは、頬を少しだけ桃色に染めながら言った。

「そんなに簡単にはできないよ」

「目が妖しいなぁ。もしかして、気になる子でもいるの?」

「まあね……。気になってしまう子はいるよ」

「それ、だいぶ気になってるね……、ハハッ!」

ヒロキは足をバタバタして、腹を抱えて面白がった。

「うん……、しっかり気持ちが定まったら、ヒロキにも話すよ」

「本当かな~?しっかり話してくれよ、約束だぞ!」

「お、おう。はい、メニュー」

「あ、ありがと。さ、何にしよっかなぁ~」

「男は待てないよね!」

「何、その話?」

「何ってさ、分かってるくせに」

「ふっ、なんだろう、う~ん……、和御魂(にぎみたま)(あら)御魂(みたま)でひとつ」

「そう、現代には現代人により添った新たな神話が必要だよ!」

「お、でましたスグル節」

やはり高校時代からの友と話していると会話は弾むし、何より、変な気を使わなくていいから、あっという間に時間が過ぎていく。このあとも、ああだこうだと、たわいもない愛らしい時間を過ごしてから、次第に話の内容が熱くなっていった。