四章 気づいてあげられなかった悔悟──娘由美の脱毛症との付き合い方

四ノ二 回復への期待

ただでさえ慎重に行うカツラ選びです。数十万円ものお金がかかることや様々なことで躊躇してきた人も多いと思います。現在では小児がんのサポートにと、“ヘアドネーション”という人毛の寄付があります。

過去の私はカツラを否定ではないけれど見送ってきました。それは子どもの年齢からくる不安もありましたが、やはり社会的な理解、認知がまだまだだと思ったのも事実でした。

最近、昔のことを思い出した私は、ヘアドネーションのことを妹から聞き、調べ、規定の長さまで達すると、ヘアドネーション賛同の美容室に行き髪を切り寄付しました。昔の由美のように髪を失った子どもがいて、そういう子どもたちが望むのなら、ぜひ使ってもらいたいと思ったのです。

昔と今とでは、世間の考え方も少しずつ変わってきているかもしれません。カツラという言い方もありますが現在は、ウィッグという言葉にもなってきていて、老若男女おしゃれをするイメージにもなってきているようです。時代が違えば私の判断も変わっていたのかもしれません。

最後に残った髪も抜け、漢方の先生に診てもらったところ、やはり毛根が針先のようでした。希望はないけれど、敢えて持つようにしました。月日が経ち、ついに細い弱々しい産毛のようなものが生えてきました。しばらくするとその毛も抜けていきました。細いのにさらにまだ毛根は鋭利なままでした。しかしこれを繰り返していくうちに毛根も丸くしっかりとしてくるからとの話をされました。

時々バスタオルで髪を流し受けては、タオルごと乾かしたものをそのまま持っていき診ていただいていました。まだまだ細く短く弱々しい毛をタオルの中で探すことも大変だと思います。しかし顕微鏡で調べていただいているうちに毛根が少し丸くなってきているのがあると、頭皮の内部が少し元気を取り戻しつつあると話をされました。ようやく光が見えたと思いました。

しばらくは、弱い髪が抜けては生えてを繰り返していました。そして徐々に髪が全体的に黒々と育ちはじめてきたのです。発症から約二年が経っていました。