四章 気づいてあげられなかった悔悟──娘由美の脱毛症との付き合い方
四ノ一 小学校時代、ある年の秋
その地域の校医もされている女性薬剤師さんで、私は希望を見いだせたこともあり、指示を聞いていこうと漢方も併用することにしたのです。脱毛が進み、親子でも辛い時期で、カツラのことも考えました。メーカーに連絡をし、家に来ていただきました。オーダーメイドで作るそうで頭を計測しました。数日して生産に入るというところで私はカツラをキャンセルしたのです。
よく考えれば、まだ小さな子どもです。ふざけて引っ張って取れるかもしれません。マット運動の前転でも取れるかもしれません。不意な動きに耐えられるのか、外れたりズレたりしたときの自分での対処は? 小さな由美のいる、私のいない学校で、それらのことが起きるかもしれないという不安材料が理由でした。
当時の私個人の偏った考えだったと思います。もちろんカツラ自体は否定するものではなく個々の状況、考え方があると思います。この時点での私は、判断を急遽、そう変えてしまったのです。このときの私は、ただ発毛を信じ由美に帽子を被ってもらっていました。
登下校は学校の帽子、それ以外は頭にピッタリとした帽子を学校でも被るようにして、学校側にも事情を話していました。
写真はこの時期のものは、ほとんどありません。撮ろうと思わなかったのが事実です。
血行を良くするという頭の塗布剤でのマッサージをしながらも抜けてしまい、何をしているのかわからず悲しい日々でした。ほとんど毛髪はなくなり、眉毛、まつげもなくなりました。
それでも元気で明るく過ごす由美だからこそ痛々しく思いました。
私も自分の気の持ち方で病んでいたのかもしれません。私が自転車で一人で出かけているときに、ふと前に母親と女児が、それぞれ二台の自転車に乗っているのを目にしたのです。親の後をついていくサラッと風になびく髪のその少女の後ろ姿を、うらやましく感じ、その姿をずっと見ていたい、追いかけていきたいと思ったのです。