入社直後は製鉄所内でさまざまな教育が行われる。当時は約二カ月、座学や現場実習があった。座学は退屈で、会社の幹部が入れ替わり立ち代わり講義をしてくれるが、どうも今思い出そうとしてもあまり頭に残っていない。多分これからの仕事に役立つものであったに違いないが、大学を出たばかりで産業経験の無い我々には、どれが重要かを見極める力も無く、仕方なく聴いていたに違いない。

時間割はあるのはあったが、しばしば変更になった。講師が部課長ゆえ、多分他用で講義をする時間が持てなかったからであろう。ある日、教室で待っていてもなかなか講師が現れず、何人かの新入社員が「ソフトボール」を始めた。

当時の製鉄所には本事務所の脇に格好の空き地があり、昼休みになるとソフトボールのゲームが行われていた。我々はその一角を占領し、勤務時間中にもかかわらずソフトボールを始めた。大学時代も休校などにはよくグラウンドに出てソフトボールをやったもので、全くそのムードでいた。

暫くすると本事務所の従業員の知るところとなり、新入社員教育担当者が大声をあげて走ってきた。その剣幕に押され、我々は中止を余儀なくされた。

その時にホームランを打ったY君は目下系列会社の幹部として勤務している。ホームランを打つだけあってゴルフもシングルを維持している。

整員課という職場に属し、約二カ月間製鉄所の幹部による教育と現場見学が行われた。寮にはテニスコートが二面あったので早速始めた。夜は麻雀が盛んであった。

新入学卒は合計二十七名、整員課所属を終え、配属先の面接を終えると、正式に配属先が決まる。研究所に五名(戸来=化工、萩原=製鋼、市島=分析、羽田=鍍金、藤田=製銑)であった。