「自分の目標は、ロバートに来年会いに行けるように、就職をまず勝ち取ることだけど、ロバートは今何か叶えたい夢や目標はある?」
と私は聞いた。
「いや特に何もない。時々憂鬱になって、それでお酒を飲みたくなる時がある。今を生きるのがやっとだよ。でも健が本当に会いに来てくれたら嬉しいよ!」
と答えるのが、ロバートは精一杯のようだった。私は彼がうつ病の症状がたまに出ることを、以前文通していた時に聞かされていた。今ビデオ通話して、彼がお酒で憂鬱さを紛らわしているのが分かった。
幸いまだ私のように服薬はしていなかったようであったが、私は彼のことが心配で、心配でならなかった。私が彼を何とかして元気づけたいと思ったのは、こういう事情も、実はあったのである。
二〇一三年十月、私は就職活動を始めた。当然のことながら、何度面接に行っても不採用通知書が届くばかりであった。初めは、希望に燃えて就職活動をしていた私だったが、不採用通知書しか届かない状況に悔しさが募ってきた。やはり予想していた通りの展開となってしまった。そんな私は井戸に、また愚痴を言い始めた。
「また就職活動しましたが、不採用通知書が届きました。やっぱり壁は厚いです。悔しいです!」
井戸は言った。
「悔しいと思えているうちは大丈夫ですよ、田中さん! ただ予想通りだと思って、最初から決めつけて、田中さんは面接を受けていたのではないですか?」
私は井戸の射抜くような表現に、はっと我に返った。そうか私は、不採用になるだろうと始めから決めつけて就職活動していたのか。社会復帰するのが怖かったことを井戸に見透かされているかのようだった。
また今の自分自身は、ロバートのことを、心の底から友達だと思っていないのではないかと、自問自答し始めていた。それは、未だ直接のロバートの温もりを知らない私の葛藤であった。確かにビデオ通話で話せたが、実際に彼に会ったことはない。ロバートを現実の人と思えないことが、私のどこかにあった。