第五章 歓迎
現地時間二〇一四年十一月一日土曜日朝、この時期にしては、こちらでは珍しいくらいという、見事な快晴である。私たちの初めての出会いを、そして魂と魂の再会を祝福しているかのような、どこまでも透き通っている青空だった。
目を覚ますとロバートがまだ熟睡していたが、私は興奮して早朝覚醒していたのである。ロバートが隣にいる何とも言えない安心感に包まれていたのと同時に、夢のような時間を共に過ごせるわくわく感でいっぱいであった。静かな穏やかな朝である。しばらくしてロバートは目を覚ました。
「おはよう、ロバート!」
「おはよう、健!」
「ロバート、よく眠れたかい」
「ぐっすり眠れたよ! 健は熟睡できたの」
「朝早く目が覚めたけど、疲れは取れたよ」
「それなら良かったよ、健! 今から朝食を食べよう! そういえば君の友達の、大志は目を覚ましたかな」
「今呼んでくるね!」
私は井戸大志を起こしに行き、昨夜のロバートとの会話を通訳した。
「聞こえましたよ。昨夜お二人が話しているの。英語で何を話していたのかは分からなかったですが」
井戸も嬉しそうに言った。私たち三人は朝食後、北アイルランドの名門クイーンズ大学ベルファスト校を訪れた。そこはかつてロバートが在籍していた大学であった。しかしながらロバートは大学を中退して、ベルファストのとある会社のカスタマー・サービスセンターに就職して、現在に至っていた。
ロバートの現在の仕事は、電話での顧客のクレーム対応であった。日々のクレーム対応に、ロバートはストレスを抱えていた。そんな中での私たち二人の訪問を快く受け入れてくれた彼に、感謝せずにはいられなかった。
秋は、日本よりも早く深まっている。大学のキャンパス内の、アイルランド島独特のエメラルドグリーンの絨毯は、初対面の我々に対して、やや紅潮しているように見える。そうか、よく考えれば、もうすぐ長く暗いトンネルを走らなければならない、寂しげな季節が訪れようとしている。そう思うと、今日の貴重な晴れ間が、急に愛おしく感じられた。
この一瞬のこの出会いの時間を、一秒たりとも無駄にするものか! 私は、夏のアイルランド島では見られない、期間限定の木々の落葉で覆われた、紅潮した、はにかみ屋の絨毯さんを見て、こう深く決意し直した。