第二章 相続不動産の基本を知る
不動産の種類とその評価について
不動産の評価の決まり方
鑑定評価の方法について対象不動産の確認を行って、種類を特定したら不動産の評価の段階へ移ります。
まず、その地域での標準的な使用が重要です。不動産の価格は多数の要因の相互作用の結果として形成されるものです。この価格形成要因には、一般的要因(日本経済の景気や経済指標の動向など)、地域的要因、対象不動産の個別的要因があります。一般的要因の作用により、一般経済社会における不動産の価格水準が決まり、そのうえで地域要因が作用して地域の価格水準(その地域の相場)が決まり、その価格水準下において、対象不動産の個別的要因が作用することによって、個々の不動産の価格が形成されます。
その地域の相場の決まり方と、対象不動産の価格決定の過程は、大きく二つになります。
・標準的な使用方法による「その地域の相場」
その対象不動産の存する、用途的にまとまりのある近隣地域において標準的な使用方法があり(例えば、戸建とか共同住宅や小規模店、商業ビルなど)取引相場が形成されることになります。例として、戸建の住宅地域においては、標準的なサイズと予算で、取引がなされるというイメージ(土地二○○〇万円、新築建物一〇〇〇万円、合計三〇〇〇万円など)です。
・最有効使用と個別的要因
対象不動産の価格を査定するにあたっては、「最有効使用」を判定することが必要です。それは、その不動産が最も価値の高まる使用方法をいいます。また、不動産の最有効使用の判定にあたっては、良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法で、使用収益が長期間持続しうる使用方法で、効用を発揮しうる時点が予測しえない将来でないことが条件となります。
対象不動産の最有効使用がまさにその近隣地域の標準的使用と一致していれば、標準的使用を前提としたその地域の価格相場と対象不動産の土地の個別格差を修正し、(建物があれば建物に関する個別格差修正も行って)価格を査定することになります。
この個別格差要因を生じさせる要因を個別的要因といいます。個別的要因には、土地の個別的要因と建物の個別要因があります。
土地の個別的要因で例をあげると、住宅地の場合には、・地勢・日照・間口奥行・高低・接面街路の幅員・交通施設と距離・隣接不動産など周囲の状態・上下水道ガスなどのインフラの整備の状態・埋蔵文化財及び地下埋設物の有無・土壌汚染の有無・公法上の規制などがあります。
建物の個別的要因には、各用途に共通するものとして、・建築の年次・面積・高さ・構造・材質・耐震性・耐火性・有害物質の使用の有無・公法上及び私法上の規制・制約などがあります。
ただし、その不動産に関する市場参加者が着目する個別的要因は、建物の用途(居住用、商業用など)によって異なります。また、最有効使用の判定にあたって、「建物及びその敷地」の場合には、注意が必要です。
現実の建物の用途が、更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用などを勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致する訳ではありません。この場合、現実の建物の用途を継続する場合の経済価値と、建物の取り壊しや用途変更などを行う場合、それらに要する費用などを勘案した場合の経済価値を、十分に比較検討するべきです。