まえがき

日本における相続の問題は、高齢化や家族構成の変化、相続資産の増加等、年々複雑化し、対応が難しくなっています。特に土地や建物を多く所有する地主の皆様にとって、相続は避けて通れない課題です。

しかし、多くの方が相続対策に関する十分な知識や準備がないままに相続の時を迎えてしまい、結果として家族間でのトラブルや予期せぬ税負担が生じることが少なくありません。

本書『地主のための相続対策』は、そうした地主の皆様に向けて、相続における重要なポイントや対策方法をわかりやすく解説するために企画しました。

専門家である弁護士、税理士、建築士、宅地建物取引士、司法書士、ファイナンシャルプランナー等、不動産、法律、税金から介護まで、それぞれの知見と実務経験を持ち寄り、地主としての相続対策を体系的にまとめています。

第一章から第七章にわたって、相続時に直面する不動産の売却ポイントや税対策、家族信託や遺言書の活用、相続対策としての土地活用のポイント、アパートオーナーが抱える介護費負担リスクの生前対策、また、相続に伴う家族間の争いを避けるための心構えや資産運用の考え方から具体的な相続対策事例まで、地主の相続対策に必要とされる幅広いテーマを網羅し、安心して次世代に資産を引き継ぐための手助けとなる一冊を目指しました。

将来の相続に向けた備えを、早い段階から整えておくことは、税負担を軽減するだけでなく、大切な家族の絆を守り、資産を有効活用するための第一歩となるはずです。この本が、地主の皆様にとって、相続に向けた準備を進める一助となり、ご家族や大切な資産を守るための道しるべとなることを願います。

緒方大介