第一章 相続不動産売却5つのポイント
不動産コンサルタント 佐藤良久
相続税増税時代への突入
国税庁は令和5(2023)年12月、令和4(2022)年に亡くなった約157万人のうち、財産が相続税の対象となったのは9・6%、前年比0・3%増の約15万858人だったと発表しました。相続税の基礎控除引き下げが行われた平成27(2015)年以降で過去最大です。
その財産の内訳を示したのが左のグラフです。令和4(2022)年は土地・家屋が37・4%と構成比の中で最も多く、約4割を不動産が占めます。〝不動産対策が相続対策〟であると言われる所以は、このデータからも読み取れます。
不動産の割合が高い資産を持つ人々の中には事前に相続対策を行う方も多いのですが、残念ながらその対策がうまくいっていないケースもあります。
「営業から提案を受けて賃貸アパートを建築したものの、ぜんぜん埋まっていない」
「相続税を払うために付き合いのある不動産会社に依頼して売却したが、もっと高く売れたのでは?」
「不動産会社に勧められて不動産投資を始めたものの、空室ばかりで困っている」
相続対策を勝機ととらえ、不動産会社が積極的に相続ビジネスに参入してからというもの、このような話を多く聞くようになりました。
相続対策は成功している人も多くいますが、うまくいかない人も少なからずいます。相続と不動産のサポートを行う専門家としてこの現状を見ると、対策に伴うリスクについて広く知ってもらう必要があると強く感じました。特に不動産の売買について、お客様の知識があまりにも少ないことが気になっていました。