2008年
外国語同士
フランスに住んでみると、日本にいた頃はヨーロッパの情報がとても少なかったと改めて思う。そして、日本人にとってはイギリスもドイツもフランスも西洋あるいは西欧としてひと括りにしてしまうが、一様ではなくむしろ違いのほうが多い。
例えば仕事のやり方だ。西欧は契約社会だとよく言うが、それはアメリカ、イギリスのアングロサクソン社会の特徴であって、ドイツ、オランダのゲルマン民族はコンセンサス重視、フランスは貴族文化をもとにした名誉を重んじる社会というように違いがある。
これは会社のマネジメント研修での、フランス人講師の解説である。会社のあるフランス人幹部は「日本人はイギリス人よりドイツ人とのほうがうまく仕事ができるのではないかな」と言っていた。
フランスのテレビニュースを見ると、国際ニュースでは他の欧州諸国、中東、アフリカのニュースが多く、アメリカ、ロシアや中南米のニュースがときどき報じられる。アジアのニュースは少ない。
最近の国際ニュースのトップはコソボの独立や中東ガザでのイスラエルとパレスチナの攻争、アフリカコンゴの選挙に関連した暴動などだ。もちろんアメリカの大統領選挙はトップ扱いである。
このようにフランスにいると身近なのがヨーロッパ各国、アフリカ、中東である。地理上の近さと歴史的な背景があるのだろう。日本にとって身近なのがアジア各国、アメリカであるのと同様だ。それぞれが偏っている。それは仕方のないことだろう。
しかし、重要なのはそれが偏っていることを認識することだ。世界にはその国のテレビや新聞、雑誌などのジャーナリズムが報じる情報以外にも様々なニュースがあり、異なった視点があるということだ。つまり相対化してみることが重要なのである。
私は仕事では英語を使ってフランス人とコミュニケーションしている。会社の公用語が英語であるためだ。
英語はフランス人にとっても母国語ではない。お互いに外国語である英語を介してコミュニケーションをするのはそれほど容易ではない。日本の本社が指示する方針の微妙なニュアンスを英語でフランス人に伝えるのは絶望的ではないかとさえ思ってしまう。
私の貧弱な英語力のせいだけではないと思う。直接フランス語でコミュニケーションができればまだましかもしれない。
だが残念ながら今の私にはフランス語で仕事はできない。毎日通勤途中の車でCDを聴いて練習しているが、なかなか上達しない。