終活
私には若い頃から不思議な体験をすることがあった。霊体験というものだ。看護師になってそれが強くなったので、とある霊能者に相談した。
「あんたは憑きやすいから、その能力は封印しなさい」
と言われた。確かに私は小さな頃から霊の存在を感じることがあり、夜は怖くて一人で寝ることは出来なかった。霊能者に言われたようにずっと封印していたが、娘が亡くなる少し前から再び霊感が強くなっていた。
それはともかく、日帰り出張って彼は一体どんな仕事をしているのだろう。あれこれ聞くのも嫌らしいか、自営業と言っているのだから、そうなのだと単純に理解しておこう。もし、彼が金銭的に困っていて「お金貸して」と言われたら、こう言おう。
「貸すのは嫌、でもあなたに投資するなら構わないけど、その代わり二度と連絡しないから」
投資っていくらならいいかな、50万円くらいかな、何かせこいな…。男前なオバさんなら、500万円くらいかな、1000万円かな、やっぱ投資は取り消して、「お金貸して」と言われたら、「バイバーイ」とメールしてジ・エンドだろう。
<件名>死後の世界
死刑囚でも般若心経の写経をして、これだけ反省しましたから、極楽浄土にやって下さいって言う。その身内も反省して一緒に極楽浄土に行きました。
クリスチャンはアーメンって言えば、天国へ召されます。
凡人は身内に見守られ、簡単に極楽浄土に行きます。
その方程式から言うと、お寺の坊主は皆極楽浄土に行けます。
天国と極楽浄土は同じ地として、私鉄で行くかJRで行くかの違いです。
たくさんの死者がそこへ行けば大混雑です。と考えたら、地獄は空いているし、ゆっくり釜風呂に入って、メス鬼が背中を流してくれるなら地獄のほうが楽しいなぁ。
何とも奇妙でグロテスクなメールが来た。彼の心の中ってこんなにドロドロしているのか、かなり引いてしまう。やはり脳に障害があるのか、ちょっと恐怖まで感じる。ホラーが好きなただの「ホラ男」ならいいけれど。
<件名>ちょっと病んでいる?
先ほどのメールはかなり引いてしまいます。
大丈夫ですか?
<件名>Re:病んでないよ
ここは笑えるところだと思うんだけどな。
相原版の「天国と地獄」だよ。
返信に気が付いたのは業務が終わってからだった。第3月曜日、病院の会議が目白押しで帰宅は遅くなる。JRの駅まで20分歩き、やっとの思いで快速電車に乗り込む。携帯を取り出すと着信のサインに心が躍る。私はすぐに彼へ返信メールを送った。
<件名>病んでなくて良かった
昼間は失礼なことを言ってごめんなさい。相原流ブラックジョークは、ちょっと過激でホラーですね。
会話なら笑えるけど文字にすると怖いね。
相原さんは出張から帰られましたか?
お互いにお仕事お疲れ様でした。