部屋の外で立ち止まり、指令書をめくった。女が指令書を読み終えた頃。

「分かりましたよ!」

猛がドアを勢いよく開いて出てきた。

「行くぞ! 怒りを窃盗犯にぶつけてやらなきゃ、気が収まらん」

そう言って、廊下をズンズン進んで行く。女は後に続いた。外に出て、車へと向かう。

「運転しろ」

猛はキーを差し出した。

「私、免許証持ってません」

「な、にぃい……」

猛が怒りに震える。ここに配属される奴が運転も出来ないだとおぉ……。ちっと舌打ちしながら、運転席側に回り、車に乗り込んだ。女がほぼ同時に助手席に乗り込むと、猛は車を急発進させた。

「で、何処にいるんだ。その犯人は」

「新宿の外れにある、ロイヤルホテルです」

「何号室だ?」 

「犯人は、ホテルの最上階を貸し切っているようです。どの部屋かは記載がありません」

「じゃあ、その階に居る奴は皆敵だな。相手は何人だ」

「廊下に一名見張りがいます。その他は四名と記載されています。全員銃を所持しています」

「よし、正面から乗り込むぞ」

この女に、自分から俺のパートナーを辞めたいと言わせてやる。そう考えながら、猛はアクセルを踏み込んだ。

部屋の外の監視を任されていた男は、エレベーターが最上階まで上って来るのに気付き、扉の前に立った。かなりの大男だ。天井までの距離が近い。男は胸へと手を忍ばせた。

チン。

エレベーターの扉がゆっくりと開く。途端に、隙間から何かが伸びてきた。避ける暇も無く、男は伸びてきた手に首を捕まれた。瞬時に意識を奪われ、だらりと垂れ下がった手から銃が滑り落ちる。男は白目を剝いてゆっくり崩れ落ちた。男が床に横たわるのと同時に扉が完全に開く。

「俺の後ろに居ろって言っただろ?」

女がさっさと降りていく後ろ姿に、猛は文句を放った。

「ん?」

猛が見たのは、廊下に倒れた大柄の男だった。どう見ても日本人では無い。外国人だ。男の頸動脈に触れ、脈を確かめる。生きているようだが完全に意識を失っている。

「おい。これ、お前がやったのか?」

女は答えず、辺りを見渡している。猛は構わず倒れた男のポケットを(あさ)った。

「こいつ、ルームキーを持っているぞ」

二人は、その鍵に書かれたナンバーの部屋へと向かった。

【前回の記事を読む】【小説】「もう戻れない。私は戦闘の快感を覚えてしまった」