【前回の記事を読む】虚構は心の中で楽しみ、妄想は捨て去るべきものである。
第1章 本書の思考と思想に関わる事項
2 本書の思想形成への経路
本書の思想
11 宗教の教えは神によるものではなく、人間の考案によるものを神や宗教の名の下に語られているものですが、それが人間という生命体の幸福に調和しているものであれば、その教えに耳を傾けることは是として然るべきことになります。要諦は、その言葉が何処で語られていようとも、元々人間の言葉なのですから、その内容については是々非々の姿勢で対すればいいということになります。
12 然るに、神や宗教は、人間が人間の持つ不幸感を幸福感に転換することをめざして人間界に導入したものですが、この目論見は成功しているとは言えません。なぜなら、幸福の基盤が宇宙観、人間という生命体、人間界の実生活という要素に安心感を得ることにあるとしますと、神や宗教はこの要素について、人間の持つ不幸感を幸福感に転換することはできないからです。
13 なお一層悪いことには、人間界に数多存在する宗教は、人間に対しては、その妄想に従わない者を脅迫・強迫し、司法権を帯びている根拠などないにもかかわらず、理不尽にも妄想により裁き罰するという神をも畏れぬ極悪非道・悪逆無道を為し、宗教間・宗派間では妄想の僅かな違いを言い募り、聖とは真逆の血で血を洗う争いを為しその反省は無く、人間界を幸福にしないばかりか不幸にし、さらに人類滅亡のリスク因子の一つになる事態迄をも招来しています。
14 上記から得られる認識は、我々人類は神や宗教から離れて、「新しく高い精神世界」へ移行して行かなければならないということになります。
15 ここに至り、「新しく高い精神世界」とは何か、という人類にとっての最重要な問いに遭遇することになりますが、その点につきましては、筆者風情が明確な回答を提示することはできません。しかし、とりあえず、という視点からはそのヒントは得られます。それは、神と宗教で構築される系は妥当に人間の不幸感を幸福感に転換することはできない、という正にこの中に在ります。
すなわち、神や宗教が宇宙観、人間という生命体、人間界の実生活について安心感や幸福感をもたらすことができないのであれば、それらの要素について、どのように考えどのように行動すれば人間は不幸感を去り真なる安心感や幸福感を得ることができるのか、を考えればいいことになります。