「見出しは一口で言うと記事の要約です。と同時に読者にとって読みたい記事を探す手がかりも提供します。新人の頃、こう教わりました。『見出しは読ませてはいけない。見た瞬間に中身が理解できるほど簡潔でなければならない』また『見出しは恋人相手におしゃべりするように考えなさい』と。私たち編集記者は、記事をただまとめるという姿勢ではなく、どう料理しておいしく見せようかと常に考え続けています。平凡な記事でもひねりの利いた見出しで映えるというのはよくあることなのです」
そしてニュースに必須な5W1H、つまり「when・where・who・what・why・how」をどう見出しに盛り込むかとか、言葉の省略はどのように行うかなどを実際の紙面を見せながら説明していった。
「要約しすぎて漢字ばかりになってしまった、たとえば『脱税指南 役員告発』みたいなものは、戒名が書かれた位牌そっくりなので『お位牌見出し』と呼びます。また記事に書かれていない内容を盛り込んだものは、実体がないので『幽霊見出し』と呼んでいます」
こういったエピソードは聴講者の受けが良く、廉は、事前練習に付き合ってくれた和枝の言う通りだったと感心した。要望のあった「参加型」は、全員に一本の交通事故の記事を読んで見出しを付けてもらうことを試みた。
六字×二行と制限字数もとりわけ少なく、決まり事の多い新聞一段サイズの所謂「ベタ見出し」を課題にしたため、奇想天外な十二文字がたくさん返ってきた。丁寧に一枚一枚チェックしながら、廉は改めて見出しの難しさを思っていた。