そのさらに二週間後、入院前の最終検査があり、和枝の担当となった呼吸器外科の鳥海医師から「心電図にわずかな不安要素はありますが、すぐに手術を決行することになりました。ただきょう、念のため追加した胸水の検査で疑問符が付いたら手術はできません」と説明があった。その夜、三人の夕食を、廉が買ってきた弁当で済ませ、早めにベッドに入ろうとしていると、鳥海医師から電話が入った。廉が取ると、低い声で「胸水にがん細…
[連載]遥かな幻想曲
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小説『遥かな幻想曲』【第16回】尾島 聡
夜、静寂を破って鳴る電話。「…端的に申し上げます。余命はあまり長くはないかと」凍り付いた、すべてが。
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小説『遥かな幻想曲』【第15回】尾島 聡
手術を前に、「娘からもらったステンドグラスを抱きしめたまま幾度も幾度も笑顔をつくろうとしていた」
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小説『遥かな幻想曲』【第14回】尾島 聡
「私、肺がんかもしれないって」その日一日を、会社でどう乗り切ったのか。それについての記憶は全くない。
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小説『遥かな幻想曲』【第13回】尾島 聡
「これに決めさせていただきます」音とつながり、潜り込み感じた将来性。
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小説『遥かな幻想曲』【第12回】尾島 聡
ピアノ探しの旅も大詰め。特別に見せてもらった中古ピアノは美しい姿で調整を待っていた
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小説『遥かな幻想曲』【第11回】尾島 聡
取材相手からの破格の値引きは賄賂か?商談に不安が募り始める。
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小説『遥かな幻想曲』【第10回】尾島 聡
スタインウェイピアノの中古販売会へ。気になっていたピアノは他の人の手に…。
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小説『遥かな幻想曲』【第9回】尾島 聡
「比類なき音」スタインウェイ。限定四台のセレクションルームへの誘いを受け揺れ動く
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小説『遥かな幻想曲』【第8回】尾島 聡
1000万円前後するピアノの購入。悩んでいると、社長がある提案をしてきて…。
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小説『遥かな幻想曲』【第7回】尾島 聡
響きの旅、ピアノとの邂逅、心揺れる音色を求めて
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小説『遥かな幻想曲』【第6回】尾島 聡
【小説】どんなピアノに出会えるのだろう。わくわくしている今が一番幸せな時なのかもしれない
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小説『遥かな幻想曲』【第5回】尾島 聡
【小説】ショパンの曲『幻想ポロネーズ』が、僕と彼女を近づける…
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小説『遥かな幻想曲』【第4回】尾島 聡
【小説】初対面の17年前、出会い頭の彼女の言葉は「ごめんなさ~い!」
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小説『遥かな幻想曲』【第3回】尾島 聡
【小説】スタインウェイとの出会いをきっかけに…妻と夫の「ピアノ探しの旅」
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小説『遥かな幻想曲』【第2回】尾島 聡
「ちょっとみんなの前で弾いてみようか」軽いノリで娘をコンクールへ誘うと、その結果は…
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小説『遥かな幻想曲』【新連載】尾島 聡
譜面台にかけられていたシューマン「幻想曲」楽譜を開くと一筆箋が挟まっていて…
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小説『遥かな幻想曲』【最終回】尾島 聡
肺がんと闘う妻「薬の値段は保険適用で3〜4万円」効果は?
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小説『遥かな幻想曲』【第29回】尾島 聡
妻が肺がん…薬の副作用で脱毛「生き続けるために治療したい」
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小説『遥かな幻想曲』【第28回】尾島 聡
「料金はもう十分いただいたので」…走行中に料金メーターを切ったタクシー運転手の真意
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小説『遥かな幻想曲』【第27回】尾島 聡
辛いがん治療を受け続けた妻が挫折しかけた、医師の非情な通告