入選替え玉事件 ~マスコミの格好の餌食に~

「早退事件」から2か月程たった頃だろうか、当該校の全日制課程で「入選替え玉事件」〈注1〉が発覚した。今度は入選(入学者選抜)の事故対応である。マスコミがここぞとばかり、何十社もやってきて、興味本位、ゴシップ的に騒ぎ立てた。三大新聞をはじめ、週刊誌、スポーツ新聞に至るまで押しかけてきた。

本庁からは事前に、「夕刻、報道各社に対してプレス発表を行う」との連絡があり、私どもはそれなりの覚悟で構えていたが、そのマスコミ攻勢たるや凄まじく、校門前にはクルーを乗せたワゴン車が数台停まり、電話はひっきりなしに鳴り続ける。

私は校長室にへばりつき、校長の電話対応の速記録を担当した。そしてすべての新聞各社の記事を収集・チェックし、“大嵐”のような対応は終わった。翌日は職場の歓送迎会であったが、私の身体は疲れ果て、週明け提出する事故報告書の作成もあったので欠席した。

校長は上司をほったらかして部下が勝手に休んだことにご立腹であった。そもそもこの事件は、着任する前年度に全日制課程の入学者選抜で起きたことである。その意味で、新補であった校長も私もいわば犠牲者みたいなものであった。

当該受検生の自宅に家庭訪問するも不在で、なかなか事件の真相は解明できずじまいであった。また校長も私も、そして全日制の副校長も全員が、同時異動であったため、直接の当事者が誰一人としておらず、何もかもがはっきりとしない状況下で、〝大嵐〟に巻き込まれたようなものだった。

その時、身をもって感じたのは、自分が直接の当事者ではなくても、管理職という立場である以上、その事案は「組織の問題」として受け止めなければならないこと、そして、管理職はその組織の責任者として、対応しなければならないということであった。

それが、一般教員と管理職の大きな違いであるということだ。

体罰事件 ~発覚というより摘発か!?

それからしばらくして、都教委への報告書の作成等も終え、ようやくほとぼりが冷めた頃、またしても全日制で、今度は体罰事件が発覚した。厳密に言えば、“発覚”というよりも“摘発?”というべき事案であった。

日頃から課題のある教員を、体罰事案を通して都教委に挙げた、というのが的を射ているかもしれない。少なくとも定時制担当の私にはそのように思えた。

この件も全日制課程の事案であったが、なぜか事故報告書の作成から始まって、後始末の対応までを新補の副校長、しかも定時制の私が担当することになった。

昇任して数か月で、事故報告書の作成の仕方、そして都教委とのやり取りの方法を一通り学んだ。その意味ではいい勉強にはなった。しかし、なぜ全日制で起きた事案なのに、こうも続いて定時制担当の副校長が対応しなければならないのか、釈然としなかった。

今、思うに、校長と全日制の副校長との関係が上手くいっていなかったからと推察する。

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〈注1〉「入選替え玉事件」本人が知らぬ間に、別人が受検合格し、入学手続きまでもが行われていたというもの。本人が入学式以降、一度も登校しなかったことから、担任が家庭に連絡して発覚。真相は、父親が本人や家族に無断で知人に替え玉受検を依頼したものとみられる。(出典:『朝日新聞(朝刊)』より「平成16(2004)年6月12日の記事」を一部参照)