山の中腹にちらちら火が燃え始めたかと思うと、ほどなくそれが「大」の文字の形に整い始めた。観光客も多いのであろう道端の見物客のざわめきが大きくなる。この時間帯、京都盆地は昼間の熱気をたっぷりと溜め込んだままだ。その蒸し暑さといったら耐え難いほどだが、この夜ばかりは闇に浮き上がる文字の眺めに、誰もが一瞬その暑さを忘れてしまう。この後、松ヶ崎西山の「妙」、東山の「法」、西賀茂の船形、大北山の左大文字、…
[連載]生命譚
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