【前回の記事を読む】届いた謎の手紙『あなたは今、どんな望みを持っていますか?』
のぞみの結末
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淳美が高沢光彦と結婚して、まもなく3年になる。高沢光彦は身長180センチメートルで、日焼けした彫りの深い顔立ちはどこか日本人離れしている。学生時代はサッカー部でキャプテンも務めたスポーツマンで、会社に入ってからはセールス成績で毎月トップ争いに名を連ねるエリート社員へと成長していた。会社からは将来を嘱望されており、そうなれば社内の女子社員のあこがれの的となるのも当然のなりゆきだった。誰が光彦のハートを射止めるかは、いつも職場の話題の一つになっていた。
数名の女性が光彦の恋人候補に名を上げていたが、その中にいたのが佐々木淳美と遠藤あかねの二人だった。佐々木淳美は色白でおしとやかな純和風美人。社内のマドンナ的存在でもあった。一方、遠藤あかねは日焼けした褐色の肌がチャームポイントの南国美人だった。やや吊りあがった大きな瞳にはいつも情熱の炎が燃え盛っていて、ときにはどこか相手を挑発しているかのような印象を与えることもあった。
見た目も性格も正反対な二人だったが、同期入社で同じ部署に配属されたこともあり、すぐに親しくなった。ランチや仕事終わりのショッピングなど、二人が一緒にいないときはないのではと思えるほどいつも行動を共にしていた。高沢光彦が同じ部署に転勤してくるまでは。
遠藤あかねは、すぐに光彦の本命が佐々木淳美であることに感づいていた。それなのに光彦と淳美は付き合う気配を見せなかった。このチャンスをあかねが逃すはずはなかった。新しいイタリアンの店ができたから、アカデミー賞候補の映画が観たいからなど、ことあるごとにあかねは光彦を誘いだした。あかねのしつこさに最初はうんざりしていた光彦も、少しずつあかねの積極性に惹かれていった。スポーツマンの光彦と明るく活発なあかねの二人の姿は、周囲の誰から見てもお似合いのカップルだった。
淳美も二人が付き合い始めると、二人を応援する気持ちになっていた。しかし、それをいいことに、あかねは淳美の前で二人の親密さをわざと見せつけた。
「ねえ、今日光彦と食事に行くんだけど、あっちゃんも一緒にどう?」
「だって、お邪魔でしょ? いいよ」
「大丈夫。いつも二人だけじゃマンネリになっちゃうでしょ。それにもう一人光彦のお友達も呼んでいるから、来てもらわないと困るの」
「もう、あかねはいつも強引なんだから」