【前回の記事を読む】小学生女子2人と男子3人で殴り合い…「いじめをチクったな」
探検
猫神さんにはさゆりとちさがすでに来ていた。
さゆりがゲンタ達を見ながら、
「無視、無視。行こ、行こ」
と言った。ショウが、
「どこ、行くん?」
と尋ねた。みやが、
「いいとこまんじゅう」
とさゆりに同調した。
はるなはみやの話に沿ってさゆりとちさの服装もチェックした。さゆりは迷彩色のTシャツにオフホワイトのキャスケットと薄茶色のスタンドカラーのジャケット、紺のジーンズに紺のスニーカー姿だ。大丈夫。ちさは白地にピンクの花がたっぷり描かれたタートルネックのニットブラウスに紺のジーンズ、薄水色のデニムジャケットと紺のリボンをあしらった薄水色のブルトンを被りピンクの蛍光色のラインが入ったスニーカーを履いている。はるなは今日一日自分が隊長のつもりでいる。自分が誰かの服装を見落としたために蜂に襲われたなどということになってはいけない。チェック完了、特に申し合わせてはいないが全員、服装は大丈夫だ。
女子四人が自転車を走らせてからも、なお、ゲンタ達男子三人は走って追いかけてくる。無視をして、はるな達四人はどんどんと自転車を走らせた。やがてゲンタ達の姿は全く見えなくなった。
大きな川に沿って上流へ進むと、何回かの小さなアップダウンを繰り返した後、遍路道との交差点まで来た。川の向こうの大きな山に鶴林寺があり、右の方から橋を渡って来て、左に向かって支流の沢沿いに山道を登っていくと太龍寺に行き着く。生活道と遍路道の交差点である。「二十一番札所太龍寺」と書かれた矢印付きの看板もある。この前はここまで父の車で来たので、近いように思っていたはるなだったが、自転車だと意外なくらいに遠かった。
そこからトレッキング道のような遍路道へと左に曲がって、さらに坂道を登った。小さな沢を横に見ながら立木に覆われたガードレールもない狭い道をくねくねと登っていくと、右に段々畑の石垣が見えた。沢を渡る小さな橋で四人は自転車を降りた。
さゆりが自転車のかごから虫除けスプレーを取り出した。全員の手首、足首にスプレーをし、軍手を一つずつ配った。その気配りにはるなは「おとな」を感じた。同級生のはずのさゆりが急に頼りになる「お姉さん」のように見えだした。
そう言えば転校してきてすぐの頃、ちさと一緒にいるところを見て、そのように感じたことがあったのを思い出した。配られた軍手はポケットにしまった。