男の子は普通にボーッとして、MDウォークマンで音楽を聴きながら、宿題をやっていました。リルルは、人間にはかすかに聴こえる歌があるんだと、聞かされた「こまどりの歌」を歌いました。
「チュッ、チュッ、チュッ、ピーロロロー。チュッ、チュッ、チュッ、ピーロロロー。」
男の子はすぐ反応して声のする方へ行ってみると、すぐリルルを見つけました。
男の子は、「うわあ、なんだ。びっくりしたあ。なんだ、妖精か。」と、すごくめずらしそうにうれしがって見ていました。
「恐くないの……?」
おそるおそるリルルが聞いたら
「うん、僕は小さい頃から妖精に興味があったから。一回、本物を見てみたかったんだー。まさか、本当に見られるとは。」
と、びっくりしたような声でしゃべりました。リルルは、そのとんきょうな声が気に入って、ますます好きになりました。
「君、名前は。」
「あ、私。リルルっていいます。あなたのお名前は。」
「あは。僕、桜木芳芽っていいます。よろしくね。」
「へえ、変な名前。でも意味があるんでしょう、その名前。」
「あ、うん。小さい頃から、田舎が好きだったから、ばあちゃんとよく田んぼ行ってさ。ばあちゃんが付けてくれたんだ、この名前。」
「あ、なんか良い話聞いちゃった。こうやってさ、普通にしゃべっていることじたい、おかしいよね。」
「言えてるかな。」
しばらく二人で話して、リルルが、
「また、遊びに来ていいかな。もっといろいろ知りたいし。」
と聞くと、芳芽は、
「うん、君みたいに人間慣れしてるような妖精だったら大歓迎だよ。」
と、笑顔で言いました。うれしくって、うれしくって空中ででんぐり返しでもやりたいような感じにリルルはなっていました。そして、夢のような男の子との会話がしばらく続いて、リルルはある日、芳芽に告白しようと決心して、芳芽の家に行きました。