サリエルが出ていった後、リルルはベッドの布団の上に寝転がってふと、つぶやきました。
「ルールだの、王様のお怒りだの、なんだかこれから嫌なことが起こりそうだわ。やめとけば良かった。」
でも、あんなこと言っといて、リルルは友達がたくさんできました。ローズやブラウンやフランネルです。しかし、恋にはなかなか巡り会えませんでした。
ある時、リルルは森の外を少し見たいと思って、森を出てみることにしました。
でも、ルールには、“夜中に森を抜け出さないこと”となっている。じゃ、夜中じゃなきゃいいんだと、ようするに、昼間に抜け出せばいいんじゃないかと。と、リルルは考えついて、自分の小さな背中から、小さな羽を取り出して、勢いよく飛び立ちました。この羽はハエのように速く飛ぶのです。
ブーン。「見回してみても、町ばかり。つまんないわ。」。すごく飽きっぽいところがあったリルルは五分で飛ぶのをやめてしまいました。でも、
「あら、面白い。人達がみんな集まって、何かやってるわ。」
驚くことに、リルルは日本の人間の世界のことを何でも知っていました。妖精のくせに。
リルルがまだ五つの頃に、両親に連れてきてもらったことがあるのです。それに、リルルは人間にすごく興味があって、「人間とはどういう生活をしているのか?」といったような本をいくつもいくつも読んでいました。
リルルの目に留まったのはある中学校で、今は生徒達が授業を受けているところでした。面白くなって、もっと近くで見てみたいものだと、リルルは窓の上に顔を引っ付けました。そのうち、眠くなってきましたが、我慢していました。
その時、「ハアッ。」というため息が聞こえて、ハッとしたリルルが窓をのぞくと、つまらなそうにこっちを向いている茶髪のショートヘアの男の子が見えました。
リルルは途端に、顔が真っ赤になって、大きな芝生の上に倒れてしまいました。それっきり、気を失ってしまいました。