【前回の記事を読む】イグアスの滝へ向かうはずが…アルゼンチンの空港でピンチ!
第一章 米・中米・南米の旅
飛ばない飛行機 アルゼンチン(ブエノスアイレス)→パラグアイ(アスンシオン) 一九七三年二月二三
これでは空港にいても仕方がないので、重いリュックを背負って雨の中を街の中にもどる。
ヴァリグ航空のNさんのところに寄って事情を話すと、パラグアイのアスンシオン経由でイグアスに行きなさいという。しかし、これではモンテビデオを経由することになるので、マイレージが増えて航空料金が十五%アップの十三米ドルを余計に支払わなければならない。
そこで、十二時半発表のストの状況をきいてから判断しようと、ヴァリグ航空で確認してもらうとストは十八時にならないとわからないとのこと。さらには今日ストが解決するにしても明日は日曜日なのでイグアス便はなく、二日後になるとのこと。まったく頭にくる。しかし、英語やスペイン語では自分の思いを十分に言えず、腹の虫がおさまらない。
再びNさんのところに相談に行くと、今日の十七時四十分発のアスンシオン行きがあるとのこと。
しかし、このフライトだと今日のアスンシオン→イグアス便はないので今日はアスンシオン泊となる。
でも、国際航空協定でその人を運んだ航空会社が宿泊場所を提供することになっているので、LAP(Lineas Aereas Paraguayas、一九九四年に活動終了)がアスンシオンでのホテルのクーポンをくれるだろうとLAPに電話してくれる。しかし、LAPはホテルのクーポンは出さないという。しばらく交渉していたが、とうとうNさんは電話でLAPと喧嘩をしてしまった。
とりあえず、アスンシオンに飛ぶことに決めたが、フライトの時間が迫っているのでホテルのクーポンはあきらめて空港にかけつける。
空港ではアルゼンチンの大統領選挙が間近で、元大統領でスペインに亡命しているペロンに現大統領が会いに行くとかで、一般の飛行制限がされており、一時間遅れの出発となった(この後ペロンはスペインから帰国して十八年ぶりに大統領に返り咲くが、七四年には急逝する)。
二時間ほどかかってパラグアイの首都のアスンシオンに二十時に着く。タラップを降りると熱帯の暑さである。簡単に入国手続きを済ませて街に行こうとするが、すでにバス便は終了してタクシーが四米ドル、さらに街のホテルが八米ドルととても高い。
そのため、空港内のロビーで寝ようとしていると男の人がやってきて、ここでは宿泊できないから無料で泊まれるところを教えてあげると言う。ついていくと空港に隣接したTAM(Transporte Aeroa Militalia)の兵営。隊長さんに直接話をして一泊できるように交渉してくれる。
兵隊さんたちも親切でわれわれに何かと話しかけてくれる。二十二時過ぎには兵舎の脇の芝生の上に簡易ベッドを持ってきてくれる。たくさんの南米の星を見ながらベッドに横になる。