【前回の記事を読む】山水画そのままの湖…船にゆられる途中で目にした驚きの世界

南京友好訪問の旅

南京から杭州へ

最後に総括的感想を述べる。中国が開発途上国であることを承知の上で、尚注文したいことがある。田島治郎氏が指摘していた上海市の都市再開発の遅れ。杭州線沿線に散らばったゴミの列に見られる公徳心の欠如。私の専門とする建築設備から見た、観光地や公共施設における衛生知識・インフラの欠如。これらは感染症などの見地から見ると非常識に近い状況である。

しかし、これらの問題と同時に、超大国の勢いも多々見られる。恐らく近郊の大地に、工業地帯が、高速道路が造成されつつあるだろう。

種々と問題点はあるが、隣国民として応援したい。また、天使のような南京の紅花芸術団の少年少女に明日の友好を期待したい。実は南京の先生たちと子供たちとの交流の糸は、わがライオンズクラブではデジタルの情報網の活用により、現在も続いている。

この紀行が当時、わが国でも画期的な行事として、マスコミにもてはやされた、東洋の親善交流の先駆けであったと報告したい。

(一九九二年〈平成四年〉一月、中村市次氏と共作)

中国に見る東洋のこころ

国際都市の面影を宿す古都

一九九三年の秋、西安と北京へ旅行した。

西安の空港ビルから一歩出ると、日は落ちた後とはいえ異常に暗い。電力費の少ないナトリウムランプが所々に点灯しているだけの広場。電力は極度に制限されて、車のヘッドライトさえ市内では規制されていると言う。

四五キロ隔てた西安市街に近づく。たくさんの灯、屋台の湯気、うごめく人々、食べる幸せ、物のない幸せ、情報が氾濫しない幸せ。そんなことが脳裏をかすめているうちに、長安グランドキャッスルホテルに到着した。そこは煌々とした不夜城であった。

一九九三年秋名古屋商工会議所主催による西安・北京・南京・上海の視察旅行が始まる。総勢二一名に会議所のS文化担当課長というメンバーである。