教育課程委員長として ~「類型制」の導入~
さて、若くして大役を任せられたポストとして、進路指導主任以外に教育課程委員長というものがあった。むしろこちらの方が私にとって大きな“怪物”であった。
教育課程委員長というと、大そうな肩書のようにも聞こえるが、何もなければ、次年度の教育課程の確認や、少人数や習熟度別の授業〈注2〉などの小さな課題解決を行っていくポストであった。しかし、丁度私が就任した年は、「類型制」〈注3〉導入という教育課程の抜本的改革を行うことになっていたから、それはそれは大変であった。換言すれば、だからこそ、私のような者以外になり手がなかったのかもしれない。
ところで、委員会で何とか漕ぎ着けた新教育課程(案)は、次のようなものであった。1年次は共通履修、2年次から主に文科系大学進学を目指す「文系類型」、主に理科系の大学進学を目指す「理系類型」、そして第3の類型として、そのいずれにも属さない、主として専門学校やその他の進路を考えている生徒のための「総合類型」の3類型を設けるというものであった。
委員会の運営であるが、委員は各分掌や教科から選出された代表者で構成されたが、ここでも、自分より年配者が多く、“口は出すが実務はしない”というパターンであった。
結局のところ、進路指導部同様に、実務面では、何もかも自分一人で進めていった。教育課程の基本構想、各教科への説明、意見聴取と折衝、会議資料及び類型制に係る冊子の作成まで、すべて自分でやりこなしていった。
誰も協力する人がいなくても、やろうと思えば自分一人でもできることを確信した。こんなことができたのも、“学校大好き人間”で、土日も職場に足を運び、それが全く苦にならない当時の自分であったからこそであった。
〈注2〉 「少人数や習熟度別の授業」「少人数授業」:生徒一人ひとりに指導が行き届くように、通常より少ない人数で授業を行うもの。例:家庭科の調理実習、音楽・美術・書道などの芸術科目、工業科などの専門学科などの実習系の授業などで取り入れられている。
「習熟度別授業」:生徒の理解度に応じて、クラスを細分化して授業を展開する方法。形の上では、少人数授業に似ているが、クラス編成の基準に「理解度」が加味されるか否かで異なる。
〈注3〉 「類型制」類型制と似たものとして、コース制というものがある。例えば大学進学に向けての文系コース・理系コースなどというものがある。類型も同様にそれぞれ文・理のコースのような区分がある。類型制とコース制の決定的な違いは、コース制は入試(生徒募集)の段階から定員を設けるのに対し、類型制は一般的に2年次、3年次になってから、希望する類型を選択することになり、入学時に予め定員が設定されているわけではない。(出典:『広島経済大学研究論集第37巻第1号 中学校進路指導の視点から見た高等学校教育の現状に関する研究(Ⅲ)』より「類型制・コース制」一部参照)