【前回の記事を読む】修学旅行をプロデュース!自らも酔いしれる企画とは?

中部地区の普通科高校

修学旅行と私(2) ~2度目の旅行担当、自らの企画に酔いしれる~

さて本番。初日の午後に立ち寄った永平寺から千里浜へバス10台を連ねて出発。天気はこの上ないほどの好天。舞台は出来上がった。順調に1組から走り出したかに思えたが、夕刻が迫るにつれ、渋滞に巻き込まれていった。旅行担当者としてのこれまでの苦労が……。

そして、それは”日没時刻との闘い”となってきた。まさに『走れメロス』の世界!! 10台のバスが夕日に向かって走っていた。車内無線で1号車から10号車までの状況が、担当の私のもとに刻々と伝わってくる。現地の日の入りは、午後5時18分とのこと。こんな状態で間に合うのか、添乗員、ドライバーとも何度もやり取りをする。そして、幾度となく時計を見る。

そのうちに添乗員は「先生、申し訳ない。もう無理かも……」と。すると、ドライバーは「先生、大丈夫。何とかしますよ」。私「でも、ム、無理して……、ジ、事故だけは……、でも、何とか……、生徒たちが……」、言葉がとぎれとぎれでつながらない。

そうこうしているうちに、先頭車から「到着したー!!」との無線が入る。そのあと続々、後続車が到着。ついに最終号車が到着。夕日はすでに水平線に沈みかけていた。あともう少しというスンデのところで、私たちは間に合った。

するとバスガイドの粋な計らいで、当時流行っていたサザンオールスターズの曲『勝手にシンドバッド』が車内に流れる〈注3〉。するとドライバーが気を利かせて、波打ち際ギリギリを軽快に走らせる。生徒たちの歓声が車内にこだまする。私はこの旅行の企画担当者として、夢にまで描いていた通りのことが、現実のものとなった至福の瞬間を味わう。

その後、10クラス全員がバスを降り、そして夕日を背景に記念撮影、そして歓喜の中で波と戯れる生徒の姿。これまで、10クラス全員が揃って行動することがなかったが、初めて一つになれた瞬間であった。そして、これぞまさしく「旅行担当者冥利に尽きる」だった。