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スウェーデン問題
環境国家めざす税制改革
この国は人口九〇〇万人ほどだが先進的で、国是である年金の公平は行きとどいている。スウェーデン政府に財政赤字はない。なぜならこの国民の財政負担率は七一%にのぼる。国の消費税率が日本では五%で、少し高くしようとすると内閣が倒れるほどの大騒ぎだが、スウェーデンでは二五%で世界最高率であり、租税全体の負担率も五〇%の高さであり(日本は三七%)個人所得負担率も二二%(日本では六・五%)の高さに及ぶ(財務省統計資料)。
さすがのスウェーデン人も高税に不満になり、一九七六年に保守連合政権が成立したこともあるが、高福祉すぎてうまくいかず、一九七六年に社会民主党が与党に返り咲いた。
一九九〇年には課税対象の転換の第一歩が踏み出された。世界初のCO2税や二酸化硫黄、窒素酸化物の排出税が導入され、所得税と法人税がやや下げられた(法人税率は先進国中ドイツに次いで低く、日本は最も高い)。最も特長的なのは、二〇世紀はgoods(良いもの)に課税していたのが二十一世紀にはbads(悪いもの)へ課税対象をシフトしようとすることである。いよいよ国を環境国家にしようとする第一歩として、この税制改革は評価される(藤井威『スウェーデン・スペシャル』)。
そして同じ頃、政府は既設原発十二基を段階的に廃棄していくという思い切った国会決議がなされた。
このように一手先の手を打っていく予防志向の国であるので、人類の未来志向には最先端を行っている。この国の18歳の少女グレタ・トゥーンベリさんは国際連合で、将来襲ってくる地球温暖化への強い警告をスピーチして世界の感動を浴びている。ポストコロナで、もっと対策をとっておくべき温暖化は世界を間違いなく変貌させる。
ここで日本をふり返ると、スウェーデンのように、何年先に何%の上昇をキチっと計画するということは日本人にとっては苦手である。動かざる岩盤に築かれたスウェーデンと違い、地震、台風などの天災国日本では明日のいのちもしれぬ「諸行無常」という認識があるからである。
余談だが、この国に生まれたダイナマイト発明家でノーベル賞で名高いノーベルの父親も爆発物の製造を行っていた。北欧は氷河でけずられた岩盤で覆われている。