七月
最後のカフェ教師の務めを果たした帰り道、小田急線代々木八幡駅で桃が待っていた。いつものように今日のことを話す。ペットに関して聞いたくだりは伏せて。駅の外では雨がざあざあと降り続いている。
「これで俺の役目も終わりだよ。本当は進路を見届けたかったけど仕方がないな。でもまあ、これでいいだろ?」
「ああ」
「桃、あの子の進路分かったら教えてくれよな」
結局連絡先も交換しなかったので、自力で知ることはできない。だけど桃は答えなかった。
「どうしたんだよ? 俺が思ったより有能だったんで、驚いてるのか?」
「いや」
「ひどいな、うまくいったんだからそこは肯定してくれよ。でも俺、これだけ根気良く無料バイトしたんだから、自分で言うのもなんだけどいいやつだろ?」
もちろん冗談である。でも桃には通じなかったみたいだ。
「レイがいいやつなのは前から知っていたよ。だからレイのことも助けられて良かった」
あ、そうだ。それで思い出した。そろそろ呪いがどうなったか話してもらおう。そもそも呪いなんて本当にあったのか。正直もうどちらでも良いと思ってはいるのだが、一応聞いてみる。
「ところで俺の呪いはどうなったんだ。俺は無理めなミッション、一応果たしたぞ。解いてくれるのか?」
少し間が空く。
「とっくに解けている」
「は?」