懐かしのセイロン紅茶
1960年代にティーバッグが全盛になってゆく前の時代、紅茶は今とは違った美味しさがあったらしい。
「今の紅茶は、味が落ちたものだ。一番の違いは発酵度が弱いことだね。昔のものと比べて深い味わいに欠ける」
会社で会うたびにそんなことを声高におっしゃる先輩がいた。紅茶製品の販売に長年携わってきたこの方にとっては、現代の紅茶が、満足いく味わいでないというのだ。その年代まで遡って、自分が未だ幼年のころ、家で昼食時も過ごしていた頃のかすかな記憶を手繰れば、やはりそうなのかなと思う。
トースターで焼き上がったばかりの熱いパンの上で溶けてゆくバターとともに、母が淹れた紅茶を飲んでいた。口の中は熱くなりまるで舌がやけどしてしまうかのような感覚があった。そして深紅の水色の水面から熱い湯気が立ち上る紅茶の味わいは、砂糖の甘味が加わったおいしさと家族のだんらんのおぼろげな記憶につながっている。
紅茶製品の大半が、ティーバッグ化する前後で、紅茶が変わってきたとするなら、どんな点が違ってきたのだろうか?
良い紅茶は、素性の良い元気な茶樹から、丁寧に茶摘みされた1芯2・3葉の生葉を、
→新鮮な空気を送って十分な時間をかけて適度に萎凋させ、
→最適な条件で揉捻と発酵を行い、
→最後に乾燥機で熱風乾燥することで出来上がる。
ここから先は、いわゆる仕上げ工程で
→異物などを除くクリーニング、
→続いてソーティングとかグレーディングという紅茶葉のサイズ分け、
→包装工程である。