第一章 傷を負った者達
こう考えると、もしかしたら、イジメっ子も同じ被害者なのかもしれない。元を辿れば行き着く先は家庭環境の問題になるのではないか。
イジメっ子は自分より弱い生き物をターゲットにする。あえて生き物と書いたのは猫や犬なども含むからだ。もし、相手が実は強者だと知るとピタリとイジメがなくなる。少なくとも暴力はなくなるだろう。当たり前だが自分より強いものとは戦わない。しかも、徒党を組んで弱者を徹底的に痛めつける。一人で誰かをイジメるなんて聞いたことがない。
イジメっ子は気が小さい。
言葉を変えれば臆病なのだろう。
だから、優しそうで自分より弱そうな人間を対象にする。そう、イジメられっ子は優しい人が多い。僕は優しいのだろう。問題を起こせば母に心配をかけることになる、それだけは出来ない。だから、無抵抗主義をとった。暴力は嫌いなので選択の余地はなかった。
こちらが勇気を出して立ち向かうと逃げるのに、大人しくしているとなにを勘違いするのか、イジメっ子は仕返しをされないのをいいことに気を大きくしてイジメてくる。自分の自尊心を保ち悦に浸りたいのか、クラスの人気者になって承認欲求を満たしたいのか。
どちらにしても、現実を直視出来ず自分が思ったように世界を動かさないと気が済まない、わがままな子供なのだ。きっと、自分が思ったように親から愛情を受けれなかったのだろう。親から認めてもらえないと自分のことを過小評価してしまい、等身大の自分に気付けない。自分に自信がないから、自分より弱い相手をイジメて自己の強さを周りから認めてもらおうとしているのだと思う。
等身大の自分を受け入れている人間が他者をイジメるだろうか? 心が満たされている者が他者を攻撃するだろうか?
イジメっ子は環境に対して何らかの不満があるか、心の傷を持っているはずである。こう思うと少しは彼らに同情の心が芽生えてくる……ような気がする。まあ、芽生えるだけで許し難いのだが。
このように、イジメっ子は無意識に自分は弱者であることを知っているので、弱者側に回らないために、いち早く、自分より弱い輩を見つけていたぶる。そして、己の存在価値を確認して安堵と悦に浸っている。